

ご入居者様ご本人と、そのご家族様にはそれぞれにまつわる「ものがたり」があります。
私たちはその大切な「ものがたり」と対話し、その方らしい生活の実現と継続に必要なお手伝いをいたします。

桜のつぼみがふくらみ始めたころ、ある男性の入居者様がホームでひっそりと息を引き取られました。
隣にいる奥さまを背に永眠されたご主人に一言「お疲れさまでした、いい人生でしたか」とそっと声をかけて差し上げました。
このご主人が、永眠される原因となったことのひとつとして、奥様が食べさせたお寿司によって誤嚥性肺炎を引起したことがあげられました。
お寿司が大好きだったご主人。
でも食べさせてしまうとたちまち喉に詰まってしまい、毎回吸引をすることとなるため、そのたび奥さまに「もうお寿司は食べさせてはダメですよ、死んでしまいますよ」と諭す職員。それでもお寿司を買って来てしまう奥さま。
奥さまは認知症ではないかとの懸念が起こり、緊急の担当者会議が開かれました。
もうお寿司は食べさせないようにしましょうと念を押し、奥様も了承をして頂いたはずでした。しかしその数日後、ご主人は永眠されました。
結局は、担当者会議の翌日にも奥さまは、ご主人が食べたいとおっしゃったお寿司を買って来てしまったのでした。
ご葬儀に参列した職員が帰って来てすぐに話し出したことは、
ご葬儀ではご主人が大好きだったお寿司を食べている写真が大きく飾られていたということでした。
結果として、人生の最後を迎える前に大好きなお寿司を食べることができて良かったのではないかと、誰もが思ってしまう瞬間がありました。
他人から見れば不幸になるのではと思えることでも、
本人にとっては幸せなことそして何十年も寄り添った夫婦にしかわからない物語がそこにはありました。
ご本人のために良かれと思って考えた対応や介護が、必ずしもご利用者にとっての満足に繋がるとは限らない。
それは誰の考えなのか、誰の想いなのか、そんな問いかけを繰り返し、ナラティブ、つまり「物語」と「対話」に基づくケアにたどり着きました。
そしてケアとは「心遣い」「配慮」と考えること。介護職である前に一人の人間である。
ご利用者のこれまでの人生をくみ取り、過去のつながり、価値観、人生観に寄り添っていく。
そして施設に入居されてからも続いていく「人生の物語」を共に紡いでいく。私たちが目指していくもの、それが「ナラティブホーム」です。

🌸ナラティブホームでは働く職員を「パートナー」と呼んでいます。
入居が決まったご入居者様に対し、ホームに来て頂く以前のその方の人生物語や、ご家族の物語を対話によって共有していきます。
ご入居頂いてからも、その物語が継続していくよう、できる限りの努力をして環境を整備してまいります。